住宅ローンの繰り上げ返済は本当にお得?仕組みと活用方法を解説します | ファイナンシャルプランナー相談はマネープランナーズ

住宅ローンの繰り上げ返済は本当にお得?仕組みと活用方法を解説します

小峰一真
  • マネー

住宅ローンの返済は長期的で利息の返済負担が大きくなるため、お得に返済したいと考える人も多くいるはずです。その方法として推奨されているのが繰り上げ返済です。確かに繰り上げ返済をする事で、元金返済を早め、利息を減らす事は可能でしょう。しかし、住宅ローン繰上げ返済の仕組みを理解して行わなければメリットを最大限に受け取る事は出来ません。今回はその仕組み・活用方法と本当にお得になるのかを解説していきます。

住宅ローンの繰り上げ返済とは?

繰り上げ返済とは、本来の住宅ローンの返済額とは別に、追加でローンの元本返済をすることを言います。追加で支払った返済額は全て元金返済に充てられるため、その分支払うはずだった利息額を減額することが可能です。

本来の利息分を減らすことができるので、当然総返済額も減ります。この点が、住宅ローンを繰り上げ返済する上での最大のメリットといえるでしょう。

このメリットを最大限に受け取るためには、繰り上げ返済の2つのタイプを知り自分に合ったものを選択しなければいけません。それでは簡単に2つのタイプについて紹介しますので、参考にしてください。

①返済圧縮型
・返済期間はそのままで、毎月の返済額を減らすタイプ
追加で支払った返済額を差し引いた元金(ローン残債)から、利息を再計算する事で毎月の支払額を減らす方法。

②期間短縮型
・毎月の返済額はそのままで、返済期間を短縮するタイプ
追加で支払った返済額を将来支払うはずだった元金返済の一部に充当し、総支払回数を減らすことで完済までの期間を前倒しする方法。

どちらが合っているかは、自分の生活状況やライフプランと照らし合わせ、お得になる方を選択するようにしましょう。

住宅ローンの繰り上げ返済はお得?

この章では上述した住宅ローンの繰り上げ返済が、具体的にどのくらいお得になるのかを上述の2つのタイプから解説していきますので参考にしてください。

◆住宅ローンの借入条件と繰り上げ返済は以下の通りで数字を算出
・総借入額:2,500万
・35年固定金利:1.44%
・返済期間:35年
・繰り上げ返済額:以下2パターン
A:100万円→ローン返済開始1年後に一括
B:500万円→ローン返済開始10年後一括

①返済圧縮型の場合

※A:100万円→ローン返済開始1年後に一括
◆繰り上げ返済無
・総支払額:3,186万円(借入額2,500万円+利息分686万円)
・毎月の返済額:7.5万円
◆繰り上げ返済有
・総支払額:3,159万円(借入額2,500万円+利息分659万円)
・毎月の返済額:7.2万円
・繰り上げ返済有無の総支払差額:27万円
・繰り上げ返済有無の毎月の支払差額:3,103円
※返済期間は35年で変らない

※B:500万円→ローン返済開始10年後一括
◆繰り上げ返済無
・総支払額:3,186万円(借入額2,500万円+利息分686万円)
・毎月の返済額:7.5万円
◆繰り上げ返済有
・総支払額:3,090万円(借入額2,500万円+利息分590万円)
・毎月の返済額:5.5万円
・繰り上げ返済有無の総支払差額:95.9万
・繰り上げ返済有無の毎月の支払差額:2万円
※返済期間は35年で変らない

②期間短縮型

※A:100万円→ローン返済開始1年後に一括
◆繰り上げ返済無
・総支払額:3,186万円(借入額2,500万円+利息分686万円)
・毎月の返済額:7.5万円
◆繰り上げ返済有
・総支払額:3,124万円(借入額2,500万円+利息分624万円)
・毎月の返済額:7.5円
・繰り上げ返済有無の総支払差額:61万円
・繰り上げ返済有無の毎月の支払差額:0円
※返済期間は1年10か月短縮

※B:500万円→ローン返済開始10年後一括
◆繰り上げ返済無
・総支払額:3,186万円(借入額2,500万円+利息分686万円)
・毎月の返済額:7.5万円
◆繰り上げ返済有
・総支払額:3,006万円(借入額2,500万円円+利息分506万円)
・毎月の返済額:7.5円
・繰り上げ返済有無の総支払差額:179.6万円
・繰り上げ返済有無の毎月の支払差額:0円
※返済期間は7年6か月短縮

(参照)
住宅ローン繰り上げシミュレーション

このように、返済圧縮型と期間短縮型のどちらを選択しても返済額という点ではお得になる事が分かります
特に今回紹介した例の場合であれば、期間短縮型の方が倍近い返済額を減らすことも可能です。

しかし、毎月の返済額にプラスして繰り上げ返済額を支払を行う事は、一時的に手元の資金を減らすというデメリットがある事も忘れてはいけません。

その点を踏まえて、現状の生活と将来のライフプランを照らし合わせ、繰り上げ返済額と2つのタイプのどちらを利用するかを決めるようにしてください。

借入条件を確認しましょう

住宅ローンの繰り上げ返済を検討する際に、借入条件を確認することも大切です。その理由は低金利の場合はあまりメリットを感じられない事があるからです。

繰り上げ返済によるメリットをどの程度受け取れるかは、自分がどういった借入条件で住宅ローンを借りているかを知った上で、金利を計算するとよいでしょう

ここでは、住宅ローンの金利を決める基本的な3タイプの借入方法を使って、紹介していきますので参考にしてください。

①固定金利:完済まで金利の変動が無い(フラット35など)

②固定金利期間選択型:3年・5年・10年間など一定期間固定金利とし、それ以降変動金利に切り替わる

③変動金利:金融情勢と連動して金利が変更され、5年に1度金利見直しが行われるのが一般的

この①〜③のどの条件で借入を行っているかで、繰り上げ返済のメリットの大きさは変わってきます。

例えば、先程紹介した資産条件A(1年後に100万円一括返済)が変動金利であった場合、利息の減額がどれくらいになるのかを、参考までに紹介しますので確認してください。
※変動金利の平均借入金利0.536%にて計算

◆繰り上げ返済無の総支払額:2,742万円
◆繰り上げ返済有の総支払額:2,732万円
◆総支払差額:10万円

(補足)資産条件B(10年後に500万円繰り上げ返済)の場合は「34万円」の減額

(参照)
target=”_blank”>住宅ローン繰り上げシミュレーション

このように、100万円の一括繰り上げ返済に対して、10万円程度の減額しかないのであればメリットを感じられない人も多くいるのではないでしょうか。

もちろん、変動型金利では金利が変動するため、金利が高くなれば大きなメリットを得られる可能性もあります。

大切なのは自分の借入条件を確認し、金利の大きさや金利が変動するタイミングを把握した上で、繰り上げ返済をする事ですので、事前に十分に検討をするようにしてください。

返済資金を運用に回しても良いかも?

繰り上げ返済で大したメリットを感じられない時に、おすすめするのが返済額を投資などの運用に回す方法です。
例えば、繰り上げ返済に使う予定だった資金をつみたてNISAの商品に、投資した場合の運用益(非課税額も含む)を考えてみましょう。
※100万円を投資したパターンAと500万投資したパターンBで紹介していきます。

◆運用条件A
・年間積立金額:1万円
・運用期間:8年
・総投資額:96万円(12万円×8年)
・運用利回り:5%(つみたてNISAの平均利回り)

◆運用条件B
・年間積立金額:40万円
・運用期間:12年
・総投資額:480万円(40万円×12年)
・運用利回り:5%(つみたてNISAの平均利回り)

◆運用結果A
①積立額:96万円
②運用益:21.6万円
③非課税による減税効果:4.4万円
④総受取額:117.6万円(①+②)

◆運用結果B
①積立額:480万円
②運用益:173.8万円
③非課税による減税効果:35.3万円
④総受取額:653.8万円(①+②)

(参照)
iDeCo・つみたてNISAシミュレーション: 三井住友銀行

このように100万円の繰り上げ返済で9万円しかお得にならない場合と比べると、同じ金額を投資した方がメリットを受け取れることもあります
500万円の資金がある場合も、同様な考え方で比較できるはずです。
特に、つみたてNISAでは運用益が非課税となるため運用結果の③もお得になったと考える事も出来るでしょう。

加えて、投資で得た運用益は更に投資に回すことで複利の力を借りて更に利益を得る事も可能になります。

投資ですので必ずしも上手くいくとは限りませんが、繰り上げ返済をした場合との比較を行う事でお得な方を選択することが出来るはずです。

まとめ

住宅ローンの繰り上げ返済は総返済額を考えると、お得になる事は間違いありません。一方で、借入条件や金利によってそれほどメリットを得られない事もあります。
そういった場合は、繰り上げ返済の資金を使って投資商品を購入し運用したほうが、より大きな金銭的メリットを受け取れる可能性も高いです。
住宅ローンの繰り上げ返済を検討している人は、ぜひ今回紹介した内容を参考にしてください。自分自身で検討する自信が無い人は、お金とライフプランのアドバイザーであるファイナンシャルプランナーへ相談をおすすめします。

この記事を執筆したファイナンシャルプランナー紹介

小峰一真(こみねかずま)

2級FP技能士/証券外務員2種/住宅ローンアドバイザー| 明治大学政治経済学部卒業

大手国内証券会社、外資系保険会社を経て、前職では独立系FP事務所に創業から携わっていました。資金計画作成、住宅購入相談、資産運用、保険相談など全般的に得意で、セミナー講師も担当しています。趣味はゴルフと読書、スポーツ観戦(横浜Fマリノス、明治大学ラグビー部を応援!)です。

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