相続税の基礎控除とは?FPがわかりやすく解説!

倉知洋平
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相続は、人生で何度も経験するものではありません。いざ自分が相続することを想像した時に、不安に感じる方も多いのではないでしょうか?そんな相続が起きる前に、抑えておきたいものに相続税があります。相続税は、税法の改正に伴い、課税対象となる世帯が増えており、身近になってきています。そこでこの記事では、相続税の概要と、相続税の申告が必要かどうかの判断基準になる「基礎控除額」の計算方法を説明します。

相続税の基礎控除とは?

相続税は、被相続人(亡くなった人)からの相続または遺贈で取得した財産の評価額に応じて課税されるものです。相続または遺贈で取得した財産の評価額を「課税価格」といいます。各相続人が相続した「課税価格の合計額」が、一定の金額以下の場合、相続税はかかりません。この金額を「基礎控除額」といいます。

相続税がいくらかかるのかを考えていくにあたって、まずは、基礎控除額をしっかり把握することが重要です。そのうえで、課税価格の合計額を計算し、その合計額が基礎控除額を上回るようでばあれば、相続税の申告と納付の準備をすすめる、というのが相続税を考える際の基本的な流れです。

基礎控除の計算方法

2021年3月1日時点で、基礎控除額は以下の計算式で算出します。

基礎控除=3,000万+(600万×法定相続人の数)

計算式をご覧いただいてわかるように、法定相続人の数によって基礎控除額も変わります。基礎控除額の計算は、非常にシンプルであるため、法定相続人の数をしっかり把握することが、まず大事になります。

基礎控除の計算方法

法定相続人とは、民法に基づく相続人を意味します。法定相続人は家族構成によって自動的に決定します。遺言の有無や、実際に財産を相続するか否かという場合には、法定相続人の数の判定に関係はありません。

まず、親族のなかで常に法定相続人となるのは、「配偶者」です。婚姻の届け出をした夫や妻は、必ず法定相続人になります。ただし、内縁関係にある人は法定相続人には含まれません。

つぎに、次の3パターンに該当する人がいた場合、その方も法定相続人となります。それぞれ第一順位、第二順位、第三順位と優先順位が設けられています。第一順位の方がいなければ、第二順位の方が法定相続人、第二順位の方がいなければ第三順位の方という決まりです。

第一順位:子

第二順位:親

第三順位:兄弟

たとえば、被相続人が妻と子どもを残して亡くなられた場合、法定相続人は妻と子どもです。その場合、被相続人の親や兄弟がご健在であっても法定相続人にはなり得ません。

一方で、被相続人と妻のあいだに子どもがおらず、被相続人の親、兄弟がご健在という場合には、妻と第二順位である親が法定相続人となります。

法定相続人における注意点①相続放棄をした人がいる場合

相続税の基礎控除額の計算の際、法定相続人の数のカウントで注意いただきたいケースがいくつか存在します。まずは、法定相続人の中に相続放棄をした人がいた場合です。結論、相続放棄をした人も法定相続人の数に含めて相続税の基礎控除額を計算します。

例えば、法定相続人が3人おり、そのうちの1人が相続放棄をしたとします。この場合は、財産を相続するのは2人ですが、法定相続人の数は3人です。したがって、相続税の基礎控除額は以下のようになります。

基礎控除額=3,000万+(600万+3人)=4,800万円

法定相続人における注意点②養子縁組の相続人の数

つぎに、被相続人が養子縁組を行っていた場合です。この場合、養子は、法定相続人としての身分を持つことになります。

ただし、基礎控除額を機計算する際の、法定相続人の数のカウントについては、被相続人に実子がいるかどうかで、以下のように基礎控除額に上限が設けられています。

1.被相続人に実子がいる場合:法定相続人となる養子の数は1人まで

2.被相続人に実子がいない場合:法定相続人となる養子の数は2人まで

法定相続人における注意点③遺言書で法定相続人以外が相続した場合

遺言書で法定相続人以外の人に相続させることもできます。遺言書で被相続人から財産を譲り受ける人のことを「受遺者」といいます。受遺者は、相続税の基礎控除額を計算する際の法定相続人の数には含まれませんので、注意しましょう。

相続税の対象になる財産

つぎに、実際に課税対象となる相続財産を考えます。相続財産は大きく2つに分かれます。被相続人の資産として考える「プラスの財産」と、負債として考える「マイナスの財産」の2つです。相続財産の確認は、相続税の申告が必要か否か、相続税の課税対象となる場合には相続税がいくらになるか把握するために重要です。

プラスの財産は主に、現金や預貯金、不動産です。それに加えて、被相続人が所有していた株式などの有価証券や、車や貴金属、骨董品、ゴルフ会員権などが対象です。

マイナスの財産は主に、借金や未払金、ローンの残債、葬儀費用、未納の税金などです。

非課税になる財産

金銭的に価値がある相続財産には原則、相続税がかかります。ただし、例外的に非課税財産として相続税がかからない相続財産があります。具体的には、以下のようなものがあります。

1.墓地や墓石、仏壇、仏具など日常礼拝をしている物
2.生命保険の死亡保険金または死亡退職金の非課税枠「500万×法定相続人の数」
3.相続人が国や地方公共団体等に寄付をした相続財産

このような財産は、相続時に例外として相続税の課税対象とならない、非課税財産として扱います。

相続税の手続きで注意すること

相続の手続きの中には、一度手続きをしてからの変更が難しいものや、相続財産として見落としやすいものがあります。そんな相続で注意すべき、代表的な二つの手続きについて解説をします。

土地を相続する場合

土地を相続する場合、一度相続手続きを実行してしまうと、後から変更が非常に難しくなることに注意する必要があります。例えば、一度土地を他人に売却してしまうと、後から買戻しをすることはほぼ不可能です。また、土地の価格が大きく変動する場合もあります。土地の相続は、特に事前に相続人同士でしっかりと合意を得るなどしてトラブルを回避することが大切になります。

見落としやすい相続財産

相続税の手続きでもっとも注意が必要なことは、相続財産を見落とさずにすべて洗い出すことです。見落としがちな相続財産として以下のようなものが挙げられます。

・タンス預金やへそくりなど
・美術品、骨董品、宝石など
・人に貸している未返済のお金や、商売の売掛金
・自宅とは別に所有をしている山林などの土地

家族が知らない、気付かない財産であっても、税務署は金融機関の情報や登記情報などから調査することができます。追徴課税されることがないよう、しっかり調べましょう。

控除額の引き下げ

相続税の申告と納税は、基礎控除額以内であれば不要ですが、この基礎控除額は、年々引き下げられています。基礎控除額が引き下げられることにより、これまで相続税の課税対象ではなかった世帯も、今後相続税の申告と納税が必要になる可能性が高まっています

実際に、2015年の税制改正で、相続税の基礎控除額は減額されたことにより、改正前まで相続税が課税される割合は4%ほどでしたが、改正後8%まで増加しています。私の家計は財産がそんなにないから相続税も課税されないだろうと思っていたら、相続発生後に多額の相続税が課税されてしまったという方がも少なくありません。

また、自分では「申告は不要だろう」と考え、本来は相続税の課税対象であるにもかかわらず、相続税の申告と納税をしなかった場合、税務署から相続税に加えて遅滞税や加算税などのペナルティが課されます。そうなると、本来よりも多額の税金を負担することになります。ですので、事前に相続税が課税されるかどうか、課税されるのであればいくらぐらい課税されるのか、確認しておくことをお勧めします。

まとめ

相続税を考えるにあたって、「基礎控除額を超えた場合に相続税の申告と納税が必要になる」ということをしっかり抑えておきましょう。その上で相続の際に、相続税の申告と納税が必要かどうか、必要であるならばどれぐらい課税されそうなのか確認をすることが重要です。まず、相続財産と基礎控除額がいくらなのか、相続発生前に事前にどのような対策が打てるのか、FPに相談してみましょう。

この記事を執筆したカウンセラー紹介

倉知洋平(くらちようへい)

2級ファイナンシャルプランニング技能士/トータルライフコンサルタント

大手企業で勤務した後ファイナンシャルプランナーに転身しました。自身も投資に精を出しています。休みの日はプロ野球観戦をしながらお酒を飲むのがもっぱらの楽しみです。

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