健康保険制度の仕組みについてFPが分かりやすく解説 | ファイナンシャルプランナー相談はマネープランナーズ

健康保険制度の仕組みについてFPが分かりやすく解説

山内壮
  • マネー
  • 保険

病院で健康保険制度を多くの方が利用しています。しかし、制度が働き方や年齢で変わるなど、意外と仕組みが分かりにくいです。この記事では健康保険制度の仕組みについて、分かりやすく解説していきます。この記事を読むと、健康保険制度の種類や特徴、保険料の仕組みが分かります。

健康保険制度とは

健康保険制度は、病気やけがに備えてあらかじめ保険料を出し合い、実際に医療を受けたときに、医療費の原則1~3割を支払えば済み、残りは自分が加入する健康保険から支払われる制度です。日本では全国民が健康保険制度への加入を義務づけられています。その加入先が職業や勤務先によっていくつかの種類に分かれ、保障内容もいくつか異なる点があります。

加入先について

加入先は大きく2つあります。「健康保険」と「国民健康保険」です。
どのように分かれているかというと、「健康保険」は会社員の方とその家族で、「国民健康保険」は自営業者、フリーターなどの方とその家族にです。
また、それぞれの健康保険から更に細分化され、以下のように加入先が変わります。

「健康保険」

主な加入先は3つです。

全国健康保険協会(協会けんぽ)
おもに中小企業の従業員、その家族
組合管掌健康保険(組合健保)
おもに大企業の従業員、その家族
共済組合
公務員、その家族

「国民健康保険」

主な加入先は2つです。

国民健康保険(市町村)
その地域に住む自営業者、その家族
国民健康保険組合
業種毎(美容師など)の自営業者

では加入先によってどのような違いがあるのでしょうか?
「健康保険」と「国民健康保険」の保険料や手当について見ていきましょう。

保険料について

「健康保険」と「国民健康保険」の計算式が以下になります。

「健康保険」の保険料計算式

健康保険の計算式は結構シンプルです。

標準報酬月額×健康保険料率÷2

標準報酬月額とは、4月~6月の給料の平均になります。標準報酬月額には基本給以外に残業手当や通勤手当なども含まれます。また、健康保険料率は所属する「健康保険」の加入先によって違います。例えば、中小企業の方が所属する「協会けんぽ」の場合、令和2年度だと2020年8月現在では9.87%です。÷2になっている理由は、「健康保険」の場合に会社が保険料を半分負担(労使折半)してくれるからです。

例えば、標準報酬月額が30万円の方では、自己負担分は保険料は14805円/月になります。このような計算で決まった金額が毎月給料から天引きされているのです。
また、条件を満たせば家族を健康保険の扶養に入れることができ、扶養家族分の保険料が上がることはありません。

「国民健康保険」の保険料計算式

国民健康保険の計算は以下の順に算出すると分かります。

①所得割算定基礎額の計算をする
給与所得から基礎控除(48万円)した金額

②医療・支援・介護(40歳以上)、それぞれの保険料を計算する
A医療分保険料の計算
 均等割額=地域毎の金額×人数分
 所得割額=所得割算定基礎額×地域毎の料率×人数分

B後期高齢者支援金分保険料の計算
 均等割額=地域毎の金額×人数分
 所得割額=所得割算定基礎額×地域毎の料率×人数分

C介護分保険料の計算
 均等割額=地域毎の金額×40歳以上の人数分
 所得割額=所得割算定基礎額×地域毎の料率×人数分

③A・B・Cの保険料を合計する

国民健康保険料は世帯の「前年の1月~12月の所得」「加入者数」をもとに計算されます。世帯で医療分・後期高齢者支援金分・介護分(40歳以上65歳未満の方のみ)の3つの保険料を支払うことになり、それぞれ所得に応じて決まる所得割額と、加入者が均等に負担する均等割額の合計によって算出されます。
(計算方法は各自治体によって異なるため、自治体の公式ウェブサイトで年収や家族構成を入力すれば、自動で計算してくれるページやファイルがあります。)

また、「国民健康保険」は家族であっても加入者一人ひとりが被保険者となるので、加入する家族の分保険料が高くなります。
一般的に「健康保険」と「国民健康保険」では、家族が多いほど「国民健康保険」の保険料の方が高いです。例えば、年収500万で4人家族の場合でも、「健康保険」より「国民健康保険」の保険料の方が年間20万以上安いこともあります。

手当について

「健康保険」と「国民健康保険」、2種類に共通する「高額療養費制度」や「健康保険」のみにある手当があります。

高額療養費制度

「高額療養費制度」とは、医療費がたくさんかかっても、1か月あたりの自己負担額が抑えられる制度です。抑えられる金額は、年齢や年収によって異なります。対象となるのは、公的医療保険制度が適用される範囲の医療費になります。
例えば、70歳未満で年収が約370万~770万円の方が、月100万円の医療費だった場合、自己負担は8万7,430円ということになります。

傷病手当金

「傷病手当金」とは、病気やケガの療養のために仕事を休んだ場合にもらえる手当です。3日間連続して仕事を休んだ場合、4日目以降の休んだ日から最長1年半にわたって受取ることが出来ます。受取れる金額は、1日あたりの給料の平均金額(標準報酬月額÷30日)の3分の2になります。
こちらは「国民健康保険」の方は受け取れないので注意が必要です。

出産手当金

「出産手当金」とは、出産のために産前産後休暇を取得した場合、休暇の間に給与をサポートする手当です。受取れる期間は出産日予定日の42日前から出産の翌日から56日目までで、会社を休み給与がなかったことが条件です。出産が予定日より遅れた場合、その遅れた期間についても期間が延長されます。受取れる金額は傷病手当金と同額になります。
こちらも「国民健康保険」の方は受け取れません。

まとめ

この記事を読んで、健康保険制度の仕組みについて知ることが出来たのではないでしょうか?

会社を早期退職し、「フリーランス」や「業務委託」という働き方を始めたい、という方が最近増えております。そういった場合、「健康保険」から「国民健康保険」になる、ということを視野に入れて計画を立てると良いでしょう。

この記事を執筆したカウンセラー紹介

山内壮(やまうちそう)
2級ファイナンシャルプランニング技能士/AFP/トータルライフコンサルタント

大手金融機関に通算5年間勤務した後、より多くのお客様と「家族のように」解決策を1つずつ大切に話したい、
という想いからファイナンシャルプランナーに転身。
自身も1歳の子供のパパとして子育てに仕事に奔走しています!

〇関連記事
医療保険は加入するべき?気になる方へファイナンシャルプランナーが徹底解説します

先進医療特約とは?概要や選ぶポイントをファイナンシャルプランナーが解説

カウンセリング相談