住宅資金を貯めて本格的に住宅購入に動き出そうとする人の中には、どの住宅ローンを利用するか悩む人も多いはずです。銀行から住宅ローンを借りる際に大事なポイントとして挙げられるのが金利です。基本的に住宅ローンの金利には変動型・固定期間選択型・全期間固定型の3つがあります。今回の記事では比較的幅広い人が利用できる全期間固定型金利のフラット35について、「仕組み基礎・メリットデメリット」をFPが解説していきます。
フラット35とは国土交通省が所管する独立行政法人住宅金融支援機構が、銀行や住宅ローンの専門金融機関と提携して提供する、最長35年かつ完済上限年齢80歳の全期間固定金利タイプの住宅ローンです。
元々は財務省と国土交通省(旧建設省)が管轄をしていた住宅金融公庫という名前で、当時国営で行われていた郵便貯金を原資として直接お客様に全期間固定金利の住宅ローンの貸付を行っていました。
当時の政府の持ち家を後押しするという政策を基に、金利変動によるリスクを全て国が負担するという形で推し進められていましたが、赤字が続きマイホームに直接貸し出すという動きは廃止になります。
それに伴って上述の通り、民間金融機関と協力して融資を行う独立行政法人である住宅支援機構が誕生し、同時にフラット35がスタートしたのです。
前身である住宅金融公庫との大きな違いは、融資の原資とその流れにあります。
金融機関がフラット35を使ってお客様に住宅ローン融資を行うと、住宅金融支援機構がその債権を買い取ります。その後、買い取った住宅ローンの債権を信託銀行等に信託し、その債権を担保に発行した証券を住宅支援機構が投資家と売買を行います。
つまり、フラット35融資の原資は証券化された債券を購入した投資家たちから調達しているという事です。
このようにフラット35は、金融機関が自分の原資を使って長期固定金利融資を行うわけではないため比較的幅広い人に対して融資が可能になる点も大きな特徴です。
全期間固定金利のフラット35では、契約時の金利が完済まで適応されるためどうやって金利が決まるのかを確認しておくことが大切です。
フラット35の金利の決め方は明確にはされていませんが、金融市場の金利の動き、つまり日本の10年国債の金利に連動しています。
なぜそうなるかというと、フラット35の債券を買い取る住宅支援機構が利益を目的にした機関ではないためです。利益を目的としていないため、通常の株式などと違い金融機関の営業方針などが金利に直接影響を及ぼす要因がありません。
そのため住宅支援機構が買い取った住宅ローンを債券化して機関投資家に売買する際に適応される金利は、金利市場の金利をダイレクトに反映するのです。
フラット35は比較的幅広い人が利用できる住宅ローンの1つですが、利用条件が定められています。
利用条件は大きく分けて「申込者」「物件」「借入」に分けられ、それぞれ以下詳細を確認ください。
【フラット35利用条件】
①申込者
・申込時の年齢が満70歳未満
・日本国籍、または永住権、永住許可を得ている
・借入金額の割合が一定の額を満たしている
→前年税込み年収400万円未満の人は返済比率30%以下まで
→前年税込み年収400万円以上の人は返済比率35%以下まで
・ローンの利用対象が申込本人または親族の居住用物件である
民間金融機関では住宅ローンを借りる際、年収金額によって融資状況が大きく変動しますが、比較的年収が低い人でも融資を受けられるのがフラット35の特徴と言えます。
②物件
・床面積
→一戸建て住宅の場合は70㎡以上、マンションなど集合住宅の場合は30㎡以上
・一般の道に2m以上面している
・2つ以上の居住室がある事
大まかな規定はこの通りですが、長期優良住宅であるなど素人目には判断できない基準もあるので専門機関に確認を取るようにしてください。
③借入
・借入可能額
→100万円以上8,000万円以下
・利用可能期間
→15年以上35年以下
・保証人、保証料は不要
・担保が必要
→融資対象の住宅と敷地を担保に入れる必要がある
借入条件や物的に自宅と敷地を担保に入れなければいけない事に注意してください。
上述した利用条件を満たして利用できるフラット35をベースとして、更に金利を押さえて借入を行えるフラット35Sについて、「二つの金利プラン」と「利用条件」について紹介していきます。
【フラット35Sの二つの金利プラン】
・金利Aプラン→当初10年間フラット35の借り入れ金利から-0.25%
・金利Bプラン→当初5年間フラット35の借り入れ金利から-0.25%
金利が下がるのであればフラット35Sを利用したいと考えてしまいますが、フラット35Sで借り入れを行うためには次の条件を満たす物件を購入しなければいけません。
【フラット35Sの利用条件】
・省エネルギー性
・耐震性
・バリアフリー性
・耐久性、可変性
上記ポイントで、国が定めたこれら住宅技術基準を満たした物件のみ、フラット35Sの利用が行えます。
イメージとしては、建築基準法(普通の住宅)をベースとして「フラット35」→「フラット35S金利Bプラン」→「フラット35S金利Aプラン」の順で技術基準が上がると考えてください。
フラット35を検討する際は、メリットとデメリットをしっかりと把握した上で借り入れを行う必要があります。
簡単にフラット35のメリット・デメリットを紹介しますので参考にして下さい。
【メリット】
①借入時の金利が固定
・借入時の金利が完済まで固定されるため、返済計画が立てやすくなる
②保証料が不要
・民間金融機関の固定金利住宅ローン融資にあるような、事務手数料も不要
③所得制限が無い
・所得最低金額に下限が無いので幅広い人が融資を受けられる
【デメリット】
①借入金利が相対的に高い
・同じ状況下でフラット35と変動金利を比較すると、フラット35の方が相対的に高くなる傾向にある
②借入時の金利が固定
・借入時よりも市場金利が低下しても、借入時の金利が一定となり相対的に金利が高く感じてしまう
③購入する住宅に基準が設けられている
・住宅金融支援機構に基準を満たしている証明書を提出する必要があり、そのための検査費用が掛かる。
このように、メリットもあればデメリットもありますので借入をする前にしっかりと確認するようにしてください。
フラット35はあくまで金融機関が窓口となって行う、住宅ローンの融資制度になります。そのため、金融機関やその借入のタイミングによって内容が変わります。この章では、フラット35の選び方を3つ紹介しますので、参考にしてください。
【選び方のポイント】
①借入時の金利を確認
市場金利がベースの金利となるフラット35ですが、金融機関毎の考え方によって金利差が生じてしまいます。そのため、契約時の金利と各金融機関毎の金利をしっかりと確認した上で、借入を行うようにしてください。
②融資手数料
フラット35を利用する場合、各金融機関が設定する融資手数料を支払う必要があり、その種類は「定率型」と「定額型」の2種類です。
目安としては「定率型」が1%〜2%、「定額型」が3万円〜5万円になります。定額型の場合は定率型よりも金利が0.2%以上高くなるので、注意しながら借入額と目安を参考に借入を行うようにしてください。
③団体信用生命保険
契約者本人が死亡または重度障害を患いローンの返済が出来ない時に、残債を支払ってくれる生命保険です。平成29年には3大疾患を含めた医療や介護にも適応される団体信用生命保険も誕生しました。フラット35では加入は任意ですので、民間の生命保険とのバランスを考えて加入するようにしてください。
フラット35は幅広い人に35年を上限に全期間固定金利で住宅ローン融資が出来る、優れた制度です。民間の金融機関にとって融資が簡単ではない固定金利にて住宅ローンを融資を出来る点は、大きな特徴と言えるでしょう。フラット35の利用を検討している人はぜひ今回の記事を参考にしてください。また、住宅ローンは長期的に生活の負担となるローンですので自分に合ったものを選ぶ自信が無い人は、ぜひお金と生活のアドバイザーであるFP相談するようにしてください。
小峰一真(こみねかずま)
2級FP技能士/証券外務員2種/住宅ローンアドバイザー| 明治大学政治経済学部卒業
大手国内証券会社、外資系保険会社を経て、前職では独立系FP事務所に創業から携わっていました。資金計画作成、住宅購入相談、資産運用、保険相談など全般的に得意で、セミナー講師も担当しています。趣味はゴルフと読書、スポーツ観戦(横浜Fマリノス、明治大学ラグビー部を応援!)です。
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