「将来もらえる・もらえない」とよく話題になる年金ですが、仕組みについて「よく分からない」と仰る方が多いです。この記事では年金制度の根幹である国民年金と厚生年金の仕組みや違いを解説します。この記事を読めば、ご自身がいくら掛け金を払っていて、老後いくら備えられているか、ということが分かります。
年金制度は社会保険の一つとして、貧困に陥るリスクを回避する役割があります。仕事をリタイアした老後や、事故で障害を抱えてしまった場合、家族がいてご自身が亡くなってしまった場合など、さまざまな要因で自立した生活が困難になる可能性があります。そこで、事前に社会全体で備え、上記のタイミングに該当した時にもらえる仕組みを確立する為に年金制度ができたのです。
今では色んな種類の年金制度が生まれ、複雑と思ってしまう方もいらっしゃいます。しかし、年金制度の根幹でもある国民年金と厚生年金の違いについて学べば、年金制度のほとんどを学んだと言っても過言では無いので、2つの老後にもらえる年金を学んでいきましょう。
国民年金は、20歳~60歳の日本に住む全員が強制加入する年金制度です。もらえる国民年金の額は以下の計算式で求められます。
781,700円×[加入月数÷480か月(40年)](令和2年現在)
月々の掛け金は令和2年現在16,540円で、年々金額が増減しています。これは、マクロ経済スライドが影響しています。マクロ経済スライドを簡単に言うと、そのときの物価に合わせて掛け金や貰える金額が変ってくる、ということです。毎年決まった金額を支払うことで、年金がもらえる権利を得られるのです。
また、国民年金の掛け金を支払うのが難しい場合、掛け金の免除・納付猶予制度を検討すると良いでしょう。対象は学生やかなり収入が減ってしまった方、失業してしまった方になります。免除・納付猶予制度を使わずに未納を続けてしまうと、年金の受給要件である10年以上の期間に満たなくなってしまうので、注意が必要です。また、免除・納付猶予制度を利用した分だけ、将来もらえる年金額が減ってしまうことを考慮しましょう。
厚生年金は、国民年金に上乗せされてもらえる年金制度です。会社員や公務員が強制加入となるので、15歳の会社員の方や65歳に退職する方も加入する必要があります。
もらえる厚生年金の額は以下の計算式で求められます。
平均標準報酬額×5.769÷1000×被保険者期間の月数×スライド調整率(令和2年現在)
平均標準報酬月額とは、厚生年金の掛け金を支払っていた期間中の額面給与とボーナスの総額を、掛け金を支払っていた期間(月数)で割ったものです。スライド調整率は、公的年金の加入者数の減少率に平均余命の延びる率(0.3%)を加えた率のことです。そのため、受給開始になるまで確定した数字はわかりません。現段階でもらえる金額を確かめる場合は、自身の誕生月に送られてくる年金定期便や、日本年金機構の「ねんきんネット」で確かめることができます。
月々の掛け金は給与によって変わります。17日以上分の給与を貰っている4月~6月の額面給与を基に計算した金額(標準報酬月額)と、千円未満の端数を切り捨てたボーナス(標準賞与額)に対して共通の保険料率を掛けて算出します。そして厚生年金では、算出した掛け金の半分は雇用主が、もう半分は加入者が負担します。
会社員や公務員の方、またはその配偶者は、国民年金の掛け金が厚生年金の掛け金に含まれているので、自分で納める必要はありません。給与から天引きされます。
しかし、厚生年金保険料の計算が少し複雑なので、毎月いくら支払うのか計算してみましょう。
厚生年金保険料の計算には以下の手順で行います。
①標準報酬月額(標準賞与額)を算出する
②保険料率を確認する(令和2年現在、一律18.3%)
③標準報酬月額(標準賞与額)×保険料率(18.3%)×50%(加入者負担分)を算出する。
例えば、4月額面給与23万円、5月23万円、6月24万円だった場合、日本年金機構が出している「標準報酬等級表」によって、標準報酬月額は24万円と見なされます。なので、毎月の自己負担額は
24万円×18.3%×50%=21,960円
ということになります。
また賞与を45万5千円受取った場合、標準賞与額は45万円となり。自己負担額は
45万円×18.3%×50%=41,175円
ということになります。
日本年金機構が「保険料額表」という早見表を掲載しているので、そちらを参考にされると良いでしょう。
詳しくはこちら⇒日本年金機構:保険料額表
また、産前産後休業や育児休業等の期間中は、厚生年金保険料の支払いが免除されます。厚生年金加入者は国民年金も貰えるので、国民年金のみの自営業者やフリーターの方より、多くもらえます。これらの面から、厚生年金の方が国民年金より手厚いと言われていますが、格差を無くすために、国民年金のみの加入者は追加でもらえる制度というのもあります。
国民年金のみの加入者は、独自の給付制度があります。それが「付加年金」と「国民年金基金」です。
「付加年金」は、月々の掛け金に400円をプラスして納付すると、200円×(400円をプラスして納付した月数)の金額が、将来もらえる年金額に上乗せされる制度です。2年で元が取れるので、自営業やフリーランスの方にとってお得だと考えられます。
「国民年金基金」は、自由に年金額や受取期間を選択することができ、加入時に7種類の受け取り方の中から1つを決めて、積み立てる掛け金が確定する制度です。掛け金は税制優遇にもなることから、加入される方も多いです。
厚生年金加入者はこちらの制度に加入することが出来ないので、上述した格差を埋める制度と言えます。しかし、国民年金基金に加入中の方は付加年金に加入できないので、どちらか一方を選ぶことになります。
年金は貧困に陥るリスクを回避する為に作られた制度であり、職業によってもらえる年金額が変わってきます。
その格差を埋める為の制度もあるので、導入するか検討しても良いかもしれません。
しかし、老後の生活費が不安な方は、確定拠出年金や年金に代わる資産形成が必要か、客観的な判断ができるFPに相談すると良いでしょう。
山内壮(やまうちそう)
2級ファイナンシャルプランニング技能士/AFP/トータルライフコンサルタント
大手金融機関に通算5年間勤務した後、より多くのお客様と「家族のように」解決策を1つずつ大切に話したい、
という想いからファイナンシャルプランナーに転身。
自身も1歳の子供のパパとして子育てに仕事に奔走しています!
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